夏虫
「そう、朝比奈はとり。お前は確か噂の学校のアイドル的な、というか有名な蒼井恵梨香だろ?」





あたしは彼の顔を見て、冗談で言ったんじゃないのかという顔をした.

「え、知らないのかよ?」

あたしは大きく頷いた。
「あたしは平穏静かに目立たないように…去年過ごしたはずなんだけど…、そりゃ、たまに授業サボったりしてたけどさ」


悠希みたいに生徒会をしている訳じゃない。何か委員や係もやってない。

普段は行動範囲も学校では広い方じゃないんだけどぁ。正しく言うと目立つ大役を避けてきたんだけど。

「蒼井は掴み所がないけど、性格のいい美人だって…、実はファンクラブもあるよ」

目が点になるというのはこういうことだ。絶句した。あの~、意味わかんないんだけど。


「はぁ……、それは知らなかった。なんでまた、朝比奈くんはそんなクラブがあるのを知ってたの?」

ようやく頭が正常に戻ってきて、初めに思いついた質問を言ってみた。

朝比奈は怒らないでよ、と前置きしてから苦笑した。あたしは了承して詳しく話すように頼んだ。

「蒼井って去年、生徒会の会計に立候補した高倉の推薦人しただろ。そんときに、ああきれいな女のコだなと思った。」

そして朝比奈はソファの私の隣に座った。
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