キミが望むのなら
「あたしね……中身のないからっぽな人間なの……」
「……え?」
小さな声でそう言った桃香ちゃん。
「昔から見た目も中身も普通で、特に特徴もないようなそんな人間なの……」
「……」
「だから彼に『お前みたいなやつ、誰も相手にしてくれない』って言われた時、仕方ないって思う自分もいたんだ……」
「桃香ちゃん……」
彼女の心の闇。
言葉を探すように、少しずつ話す桃香ちゃんの手を、俺はずっと握っていた。
「あたしなんて、誰も見てくれていない。必要としてくれてないって……」
思った以上に深い彼女の心の闇。
でも、この気持ちは俺も分かる。
誰も俺を見てはいない。
必要としていない。
俺の変わりはたくさんいて、俺じゃなくてもきっと大丈夫なんだって……
「桃香ちゃんの気持ち、なんかわかるな……」
「悠君?」
「でも、きっとそう思って悩んでいるのは俺たちだけじゃないはずだよ」
「……そうかな?」
不安そうに首を傾げる桃香ちゃんに、微笑み返した。