キミが望むのなら


初めて会ったとき……


「下を見るのも悪くないけど、上を見るのも楽しいよ?」


「……うん」




――『下ばっかり見てたら、こんな綺麗な満月だって見れないよ』


初めて会った時に言われた一言。


確かに、上を見ないと見れないものだよね……



「俺ね、ここでずっと生きてる実感を得に来てたんだ」


「……え?」


「毎日毎日の息苦しい日々から解放されたいのと、自分がちゃんと生きてて時が過ぎてるのかをここで実感してるんだ」


「……悠、くん」



空を見上げる悠君の瞳は……やっぱりどこか悲しそう。



「たまに自分が自分じゃないような気がするんだ……」


「……」


「それが怖くて堪らないんだ……」


頭を抱えるように俯く悠君。



「あっ……の」


何も言えない自分が情けない。


こんな時、どんな言葉をかけていいか全く分からない。



結局、あたしはとても無力なんだ―……




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