キミが望むのなら
今まで卑屈になってたけど、普通のあたしもちゃんと見てくれる人がいるんだ。
「でもそれは篤志じゃない」
「……なに?」
「あたしが好きなのは篤志じゃないっ!!」
「っ!!」
あたしが好きなのは……
あたしをちゃんと見てくれるのは……
「はぁ―……やっぱり桃香には、少しくらい痛い思いしないと分からないのかな?」
「っ!」
襟元を掴まれ、振り上げられる篤志の手。
っ―……
もうダメっ……
ギュッと強く目を瞑った……瞬間―……
――バンッ!
「桃香っ!!」
勢いよく開いたドア。
……え?
「っ!!何してんだよっ!!」
ドカッと鈍い音が聞こえて、襟元から篤志の手が離れる。
「はぁ―……はぁ―……」
苦しい状態から解放されて、一気に空気を吸い込んだ。