キミが望むのなら


「桃香ちゃん……」


自然と名前を呼んでいた。



「だから悠君には手を出さないでっ!!」


「っ!!桃香っ……お前っ!!」


右足が上がった時、蹴られると瞬時に判断した。


「桃香っ!」


考えるよりも先に、体が動いていた。



「っ!!悠君っ!!」


う゛っ゛……


「あっ……悠君っ!悠君っ!!」


パニックに落ちたように、俺の名前を呼び続ける桃香ちゃん。



「大丈夫だから……、ね?大丈夫……」


やっと腫れが引いてきた頬が、また赤く染まっている。


またこいつに殴られたんだろう。


もうこれ以上。


桃香ちゃんに、手は出させない。


俺の命代えてでも、キミを守って見せる。



――俺の、大切な人だから。







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