キミが望むのなら


「ここで大丈夫」


「あっ、うん」


家が立ち並ぶ住宅街で、立ち止まった。


「本当に今日はありがとう!また明日ね」


そう言って立ち去っていく彼女の背中を、俺は見えなくなるまで見送った。



―――――――――――――――――……


「ただいま帰りました」


「悠さん!突然出かけて……っ!!どうしたんですか!?その顔!!」


あぁ、殴られたんだった。


なんか今更痛みが、また来出したな……



「早く上がって冷やしなさいっ!!」


意外だった。


俺のケガに、こんな焦るなんて。


居間に行き、おばあ様がタオルに包んだ氷を持ってきた。


「あ、ありがとうございま……」


「そんな顔でっ!明日はどうなさるつもりですかっ!?」



……あぁ―……なんだ、そういうことか……


俺の心配じゃなくて、明日の展示会でのことで心配してたんだ……


「そんな顔じゃ皆さんに紹介なんて……」


大々的に明日紹介するって言ってたもんな……


それが出来ないとなれば……


「あなたは……紺野呉服店に泥を塗るつもりですかっ!!」



結局、俺はそれだけの存在……




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