キミが望むのなら
引き取ってくれたおばあ様の為にも、必死に勉強した。
それなのに……
「おばあさまは、俺よりこの呉服店が大事なんですね……」
「ゆう……さん」
そんなの分かってたはずだ。
ここに来た時から、一度も俺に笑いかけてくれなかったおばあ様。
仕方なく俺を引き取ったのだって、分かってる……
だけど……
「俺はあんたの人形じゃねぇんだよっ!!」
「っ……」
「俺はっ……」
怒りなのか、悲しさなのか……
自分でも意味のわからない感情が、頭の中を駆け巡って気持ちが悪い。
もう何も考えられなかった……
気付いたら、逃げるように家を飛び出していた。
必死に走って、走って……あの公園に来ていた。
もちろん桃香ちゃんはいない。
今日は来るはずない。
でも、居ないでいてくれてよかった。
こんな俺、キミには見せたくない。
こんなに弱い俺は……
「はっ……バカかよ……俺」
小さな声は、三日月の夜空に吸い込まれて消えていった―……