キミが望むのなら
今だって、こんなに苦しそうなおばあ様の手を、握ることしか出来ない……
俺は、なんて無力なんだ―……
救急車に一緒に乗り、苦しそうに息を吐くおばあ様を見ながら、そんなことばかり考えていた。
「ご家族の方、どなたかいらっしゃいますか?」
病院のロビーで頭を抱えていると、白衣を着た中年の男の医師に呼ばれた。
「はい」
ゆっくりと立ち上がり、案内される部屋に入る。
「紺野さんの呼吸は安定してきています。もうすぐ目も覚まされるでしょう」
「そうですか……」
ホッと胸を撫で下ろした。
「ですが紺野さんの病状はとても危険です。紺野さんの方から、何かお話はお聞きになりましたか?」
「い、いえ」
「そうですか……。では私から申し上げます。」
「……」
「……紺野さんは、肺がんに侵されています」
「……え」
……なんだよ、それ。
おばあ様が、肺がんだと……?
「そのことをおばあ様は……」
「知っています。ですから手術を薦めたのですが、店があるからと断られてしまって……」