キミが望むのなら
「いや……です」
小さくそう言ったおばあ様。
「何故ですか!?このままでは……」
「悠さん、あなたに大事な話があります」
「……え?」
大事な話……?
「今はそんなことよりっ……!」
手術のことを……
「悠さん、あなたは私の跡を継がなくてもいいです」
「……は?」
「女将っ!?」
『跡を継がなくてもいい』だと……?
「何を言ってるんですか!?女将っ!!悠さんが紺野呉服店を継がれなければ……」
「いいんです、もう。紺野呉服店は私の代で店を閉めます」
「そんなっ!!」
目の前で繰り返される会話に、全然頭がついていかない。
どういうことだ……?
俺は、今何を言われているんだ……?
「あなたはもう跡取りでもなんでもありません。自由に生きなさい」
――俺は、ついに見放された……