キミが望むのなら


「あたし1人で行くの……?信二君も一緒じゃ……」


「ごめんね。俺はちょっと美樹ちゃんに大事な話があるから……」


「えっ!?」


大事な話と言われて、声を上げたのは美樹。


一瞬にして、美樹の顔が強張る。


「……わかった、行くよ」



そんなこと言われて、信二君を連れていけるわけないじゃん!


「ありがとうっ!!じゃあよろしくね」


「はいはい」


チラッと美樹を見ると、今にも泣きそうな顔をしている。



それほど緊張しているのだろう……


特に、最近は信二君の様子がおかしいって、美樹自身も言ってたからね……



「美樹……」


ここでは何も言えず、ただ手を握ってポンポンと軽くその手を叩いた。


すると大きな瞳にうっすらと涙をためて、うんうんと頷く。



「じゃあ行ってくるね」


「うん」


もう一度、美樹の手を強く握り、そっと離して歩き出した。



「……悠をよろしくね、桃香ちゃん」


「え?なに……?」


「うぅん。なんでもない。じゃあ俺たちも行こうか」


「っ……う、ん……」



そんな会話は、もう離れて歩き出しているあたしには聞こえなかった……




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