キミが望むのなら
ただ……
ただね……
「この着物、明日納品ね!」
「わかりました!」
こんな風に一緒に居たいわけじゃないよ―っ!!
「桃香、大丈夫?疲れた?」
休憩に入り、裏で休んでいると声をかけてくれる和服姿の悠君。
「あっ、うぅん。大丈夫」
「ごめんね。付き合いたてなのに、デートにも行けないでバイト頼んじゃって……」
本当に申し訳なさそうにあたしを見つめる瞳。
「いいよ、いいよ!あたしが進んでバイト頼んだんだし!!」
そう、あたしは今、紺野呉服店でバイトをしている。
って言っても、何も専門的なことを知らないあたしは、片づけをしたりお客様の飲むお茶の準備をしたりと……
つまり些細なことしか手伝えてないのだ……
そもそも、こんなことになったのは付き合ってすぐのこと。
悠君のおばあさん。
つまりここの女将が手術のため、長期入院をすることになり、この店を中心となって仕切るのは4代目の悠君になった。
女将の抜けたことにより、店はとても忙しい状況に。
人手が足りず、どんどん疲れている悠君を見て、つい『あたしが手伝おうか?』って言ったのが運のつき。