キミが望むのなら
「あっ、違ぇよ?決して今までがカッコ悪かったって言ってるわけじゃねぇよ?」
「はいはい」
「たださ、桃香ちゃんと付き合い始めて、なんて言うの?悠に守るものが出来たせいか、カッコ良さが増した」
「っ……バカか。男に褒められても嬉しくねぇよ」
こいつ、よくもこんな恥ずかしいことをスラスラと……
「それにしても、守るものが出来るって案外悪くないな」
「そうだな」
1人が気楽だと思っていた俺。
どうせ大事に思っても、いつかは居なくなる存在。
そんなモノをわざわざ作るなんて、馬鹿らしいと思っていた。
だから簡単に今まで色んなモノを手放すことが出来た。
でも、桃香はダメなんだ。
絶対に手放せない。
俺があの笑顔を守りたいって思った時から、俺には手放せない大事な守るモノができた。
「それでさ……由佳のことなんだけど……。今日から呉服店のバイトに入るってほんとか?」
「あぁ―……、美智花さんが勝手に採用してた」
おばあ様が入院して、呉服店は今とても大変な時期。
しかも今のシーズンは、成人になる方が振袖を選びに来ている。
その対応や接客は、とてもじゃないけど社員だけじゃ回らない。