キミが望むのなら
だから桃香の言葉に甘えてバイトに入って貰ってるけど……
「桃香ちゃんはもちろん由佳の存在、知らないんだよな?」
「当たり前だろ。わざわざ話すこともないし」
「そうだよな。わざわざ話して、心配かけることはないもんな」
「あぁ―……」
やっと気持ちを伝えて両想いになれたのに、荒波は立てたくない。
「でも、由佳はまださ……」
「……分かってる。ちゃんと俺から由佳には話す」
きっと由佳は今でも、俺を思ってくれている。
きっと信二もそれを思って、心配してくれているんだろう……
「別れ方が別れ方だったからな……。由佳も心に残ってるんだろうよ」
「あぁ―……そうだな」
由佳と別れたのは、本当に俺の勝手な理由。
居心地が良すぎて、それにどっぷり浸かって、出られなくなるのが怖かった。
だからその前に手放した。
簡単に、嫌がる由佳の手を放したんだ。
あの時の俺は、最低だった……