キミが望むのなら
「とにかくさ、ちゃんと桃香ちゃんを支えてやれよ?案外人の心は簡単に壊れるんだからさ」
「……気を付けるよ」
桃香の心を守るのも俺の使命。
もう桃香のあの瞳から、涙なんか流させたくないんだ……
「あっ、そういえばこれ、昼休みまでだったよな!?」
制服のポケットからクシャクシャになった紙を取り出し、広げる。
「お前さ、それ進路希望の紙だろ?まだ出してなかったのかよ?」
「あぁ―……、もう俺大体決まったからさ。そんな担任も焦ってないんだよね」
いいのかよ。担任もそれで。
「悠はもう出したんだよな?」
「大分前にな」
「やっぱり就職?」
「まぁな。紺野呉服店に就職して、ちゃんと家業を継ぐよ」
「そっか」
進路希望の紙には、第一希望しか書かなかった。
俺の夢は、決まっているから。
「そういえば、桃香ちゃんはどこに行くんだ?」
「え?」
「進路だよ。就職なのか?それとも進学?」