キミが望むのなら
「桃香、行くぞ」
「う、ん……」
制服姿でそこに立っている……桃香の元彼の篤志。
すぐに繋いでいる手をもう一度強く握って、そいつの横を通り過ぎようとする。
「ちょっと待って」
「なっ!」
「やっ!!」
桃香の腕を掴むそいつに、とっさにその手を俺が振りほどいた。
「桃香に触るなっ!!」
こいつが桃香にしたことを考えると、桃香に触れてほしくなかった。
「どういう面下げて、ここに来たんだよ。桃香にしたこと忘れたわけじゃないよな?」
「っ……」
こいつのしたことは、桃香の心に大きな傷を作ったんだ。
お前が忘れても、桃香は一生忘れることは出来ない。
こんな風に、今も体を震わせている桃香。
そんな桃香を俺は支えるように抱きしめた。
「……付き合ってるのか?」
「そうだけど、なに?」
「……そっか」
俺たちから視線をそらし、呟くようにそう言った篤志。