キミが望むのなら
「ごめん、ちょっと時間ある?」
「う、ん……。じゃあ、着替えて待ってるね」
「あぁ、ごめんな。出来るだけ早く終わらせるから」
「いいよ。じゃ……」
腕を離し、裏の方に行く桃香の背中を見つめる。
「悠君……」
「……由佳」
黒髪を触りながら、俯くようにそこに立っている。
「ちょっと話いいかな?」
「……あぁ」
いつかはちゃんと話さないといけないと思ってた。
誰もいない店内は、とてもシーンとしていた。
そんな雰囲気に俺たちは包まれる。
「彼女、出来たなんて知らなかった……」
「……ごめんな」
「っ……。な、なんで謝るの?」
「あの時の俺、由佳の気持ちを考えずに手放したよな……」
俺から告げた別れ。
由佳は『イヤだ』と言ったのに、別れを告げた。
「あの時の俺、最低だったよな……。突然さよならを言われる方の気持ちなんて、全然考えてなかった……」