キミが望むのなら
「あたし、まだ悠君が好きなのっ!!」
っ!!
「ちょっ!由佳っ!!」
そんな声が聞こえて、体が強張った。
そこから足が動かない。
「なんで?なんであたしじゃないの!?あたしの方が悠君を理解できるし、ずっと好きでいたのにっ……」
「由佳……」
――ドクッ
優しい悠君の声。
あたしの大好きなあの声。
でも、あたしはその声をもう聴きたくなくて、その場から走り出していた。
だって、その声は……
今あたしの名前じゃない名前を、優しく呼んでいるから―……
混乱する頭を抱えながら、置手紙を書いた。
手の震えが文字に表れないように、必死にペンを握る。
しっかり……
しっかりしなよ、桃香。
とにかく今は悠君に会えない。
会いたくない……
やっとの思いで足を動かし、逃げるように店を後にした。