キミが望むのなら
こんな不安になることないのに……
悠君の彼女はあたしでしょ……
なのに、なんであたしが逃げちゃうのよ……
頭ではそう思っているのに、足はどんどん店から離れていく。
――ガチャ
「……」
「あら、桃香。ちょうどよかった」
玄関に入ったと同時に、リビングから顔を出してきたお母さん。
「あたし……今日はもう寝るね……」
「あっ、ちょっと待ちなさい。少しだけリビングにいらっしゃい」
いつもなら止めないのに……
なんで今日に限って……
「はぁ―……」
ため息を吐きながら頭を抱え、リビングに入った。
本当に、今日は早く眠りたい。
眠れないかもしれないけど、眠って全てを忘れてしまいたい……
「おかえり」
「え?なんで……」
リビングのソファーに座っているお父さん。
仕事人間のお父さんが、リビングにいるなんて珍しい。
いつもまだ会社か、自分の部屋で仕事してるのに……