キミが望むのなら
「うぅ~~」
公園から出て、一番最初の角を曲がった瞬間、その場に座り込んだ。
「うぅ~~」
何度も、何度も、瞳から落ちる涙を必死に拭く。
――『下ばっかり見てたら、こんな綺麗な満月だって見れないよ』
そう……だよね。
下ばっかりみてられないよね……
涙を必死に飲み込むように、パッと夜空を見上げた。
今日は満月。
悠君と出逢ったあの日のように、空には綺麗な月が輝いている。
なのに……
なんでだろ……?
――今日は、滲んで綺麗に見えないや……
―――――――――――……
「桃香、準備出来た?」
「うん……大丈夫」
家の中のものはほとんど無くなって、向こうの家にもう移動してある。
今あたしの手元にあるのは、小さなバック。
その中には財布と携帯、そして悠君がくれた桃の香水が入っている。
それ以外には、手に悠君が取ってくれたウサギのぬいぐるみを持った。