キミが望むのなら
「……いいの?桃香?」
「うん、いいの」
笑顔でそう返すと、それ以上何も言わず、手をギュッと握ってきた。
「……桃香、離れていてもずっと友達だよ」
「うん。ずっとね」
そっと手が離れ、2人で笑い合った。
――ありがとう、美樹。
今まで住んでいた家をもう一度見上げ、車に乗り込んだ。
美樹は泣きながら手を振ってくれた。
あたしも必死に涙をこらえて、車の中から手を振った。
美樹が見えなくなるまで、ずっと―……
―――――――――……
「結構速く着いたな」
「そうね、搭乗するまで、後30分くらいはあるわね」
空港について、ロビーでそう話すお父さんとお母さん。
あたしは椅子に座り、刻々と過ぎていく時間を見つめる。
今頃悠くんは準備中かな?
今日、連絡いれてくれるって言ったけど、ごめんね。
携帯、解約しちゃったんだ。