キミが望むのなら
「……なんか、それわかります」
ここの空気は都会とは思えないほど、澄んでいるような気がする。
「ねぇ、キミの夢はなに?」
「……え?っ……」
彼の瞳をはっきりと見たのは、この時が初めてだった。
彼の瞳にもあたしが映っていて、それがあたしの心をドクッと高鳴らした。
「ゆ……め?」
「そう。将来の夢とかさ」
「将来……」
そんなの、考える必要もないと思ってた。
普通に就職して、普通に結婚して……
それがあたしの人生で、将来だと思っていた。
『夢』なんて、持っても意味がないと思った。
だって『夢』を叶える人なんて、この世でほんの一握り。
しかも夢を叶える人は、みんなそれに向けて努力や個性を引き出している。
――普通のあたしが……
――何も個性のないあたしが……
『夢』なんて、持っているわけがない。