キミが望むのなら
目的の場所へと近づき、自然と上を見上げる。
そしていつも見つめる看板……
『紺野呉服店』
昔ながらのその看板は、とても趣[おもむき]があり、老舗の感じを引き立たせている。
ここは昔から続く老舗の呉服店。
そして、俺の家はその店の裏の離れにある。
大きなこの店は、今は俺のおばあ様が後を継いでをいる。
話によると、おばあ様で3代目だそうだ。
そして俺はその呉服店の4代目―……になる予定。
紺野悠[こんのゆう]。
ここの跡取りになって、早2年半が過ぎようとしている―……
――ガラッ
昔ながらの竹でできたドアをスライドして、中に入る。
「あら、悠さん。おかえりなさい」
「美智花[みちか]さん、今日は朝で終わりなんじゃ……」
「それが下の子が今朝熱出してね~。代わりに昼から来たのよ」
綺麗に着物を着て、綺麗な立ち振る舞い。
さすがここの務めて10年のベテランさんだ。