キミが望むのなら


「下の子ってまだ小学生でしたよね?帰って、そばにいてあげなくてもいいんですか?」


「ふふっ。優しいのね、悠さんは」


っ……


「からかわないでください」


「あら、からかってなんかないのに」


美智花さんはいつもこんな感じだ。
 

でも、とてもいい母親なんだろうな……


「上の子が今日は学校が早く終わって、帰ってきてるから大丈夫よ。」


俺が靴を脱いで畳に足を進めると、そう言って優しそうに笑った。


確か上の子って、俺と同じ高校生だったはず……



「悠さんこそ。毎日毎日覚えることがいっぱいで大変でしょ?疲れてると風邪もひきやすくなるわよ」


「大丈夫ですよ。もう慣れましたから」


「さすが紺野呉服店の4代目ね。余裕なのかしら?」


ふふっと笑う美智花さんに、俺も笑い返した。


……余裕か。






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