キミが望むのなら
「千崎様の帯の見立て……」
「何か問題がありましたか?」
今回は千崎様のご婦人の帯を俺が見立てさせてもらった。
淡いクリーム色の大人っぽい着物。
それにあわせた帯は、落ち着いた雰囲気の物を、俺なりに選んだつもりだ。
「悠……」
「はい」
「色を変えなさい」
「……え?」
正直、今回の見立てには自信があった。
大人っぽさを前面に出した見立ては、40代の千崎様にとても似合うと思ったから。
「帯は店に飾ってあるあの、藍色にしなさい」
「え……でもっ……」
「いいから、早く準備しなさい。千崎様がいらっしゃるでしょ」
「……はい」
言いたい言葉を飲み込んで、店内に戻り、飾ってある帯をそっと手に取って戻った。
「おばあ様……」
「貸しなさい。綺麗に納品するから」
おばあ様の手に渡った、藍色の帯。
俺が準備していた、帯とはかけ離れたものだった。