キミが望むのなら
「やっぱりまだ早かったわね。悠さんに見立てをさせるのは……」
「っ……」
胸がキリッと痛んだ。
この言葉はたった一言だったけど、俺のこれまでを否定するほどの威力はあった。
なぜなら、この見立ては俺が初めて一人で任されたことだったから。
2年半勉強して、やっと帯の見立てをさせてもらったのに……
こんなに簡単に却下されるとは……
しかも、2年半も勉強してて、帯ひとつおばあ様の満足するものを選べなかった。
「失礼します。千崎様がいらっしゃいました」
「あ、はい。ほら、悠さん。あなたも行きますよ」
「……はい」
もやもやした気持ちのまま、店内に足を進めた。
「いらっしゃいませ。千崎様。準備はできてますよ」
「あら、ありがとう」
上品そうな千崎様。
やっぱり、俺の選んだ帯の方が……