キミが望むのなら
「夢って……」
「……え?」
シーンとした空気の中、ボソッと俺の耳に届いた小さな声。
「……ないといけないんでしょうか?」
「……」
「……夢がないと、幸せになれないんでしょうか?」
ギュッと服を握る、細く綺麗な指。
「あっ、あたし、何を言ってるんだろ!?」
ハッと息を飲んで、焦ったように髪を触った彼女。
その行動が、彼女の本当の姿だと感じた。
見た目は普通の高校生なのに、行動や話し方が、大人っぽいと思っていた。
でも、それは彼女の本当の姿だとは、どうしても思えなかった。
「……夢、持つ気がないの?」
「……え?」
「いや、なんかそう言ってるような気がしたから」
「っ……」
あっ、また下を見る。
彼女のクセなんだろうか……
こうやって下を向くこと。