キミが望むのなら


楽しそうに映画館に向かう美樹たちの後ろを、ただ黙って歩くあたしと彼。



さっき彼はあたしに『初めまして』って言ったよね……


もしかして、気付いてないのかな……?


公園で会うのは夜だし、暗いもんね……


それに、最近は公園にも行けてない……



だって、夜に抜け出したりなんかしたら、篤志が……



「……夜とは雰囲気が違うね」


「……えっ!?」


パッと彼を見上げた。


「でも下を向く癖は健在か」


そう言って笑う彼は、やっぱりあの公園での彼だ―……



「下ばっかり見てたら、こけるよ」


「あっ、うん」


「名前……」


「え……?」


「鈴木桃香っていうんだね……」


「う……ん」


名前を呼ばれただけで、バカみたいに胸が震えた。







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