キミが望むのなら
「じゃあそろそろ帰ろ……えっ?」
離されそうになった手を、強く握った。
嫌だ。
イヤだ。
いやだ……
まだ、悠君と一緒に居たい。
悠君のこと、もっと知りたい……
「あのっ!あたしっ……」
「なにしてんの?」
後ろから聞こえた低くて冷たい声。
「……あっ」
振り向いてすぐに、言葉を失った。
「何してるの?桃香」
――ゾクッ
その声はあたしの体を震えさせるには十分な威力があった。
ガクガクと震えだす体と、悠君を握っている手。
そこまで暑くもないのに、体からはスーッと汗が出てくる。
「もう一度聞くよ?ここで、そいつの手を握って、何をしてるの?桃香」
「っ―……」
篤志の瞳は、怖いくらいにジッとあたしを見ていた……