キミが望むのなら
特別な想い‐悠Side‐
「はぁ―……ダル……」
ただでさえ人混みが嫌いなのに、こんな休日に街中に行かないといけないんて……
ことの発端は、数日前。
朝から俺の顔色を読むかのようにして、様子のおかしい信二。
そのわけは『ダブルデートをしてほしい』と言われて、納得した。
でも、このことを聞いて一番目に思ったのは、俺にも信二にも彼女いないじゃん……ということ。
詳しく話を聞いていくと、どうやら信二のことを前から気になっている女の子が『どうしてもデートをしてほしい』と言ってきて、断れなかったそうだ。
『頼むよ~~』と泣きついてくるが、こいつのことだ。
大体考えていることはわかる。
俺が休日に遊んだりしないから、わざとダブルデートなんていう計画をたてたんだ。
休日も跡取りとしての勉強のため、ほとんど呉服店で働いている俺。
そんな俺を無理やりにでも、遊びに誘いたかったんだろう。
こいつの考えそうなことだ。
断れなかったとか言ってるけど、そんなわけない。
だってこいつ、今まで何度もデートの申し出を断ってきている。
モテるからな。
まぁ、俺の為というのもあるが、もう一つは……
『はぁ―……なんで美樹ちゃん、諦めてくれないんだろ?』
なんて言ってたけど、本当は少し美樹ちゃんのことが気になってるんだろ?