【番外編】ルージュはキスのあとで
花火と浴衣と口紅と
花火と浴衣と口紅と
―― ありえない。
俺は頭を抱えて大きく息を吐き出した。
目の前には、愛しくて可愛い女が真っ白いシーツに包まって幸せそうな顔をして寝息をたてている。
その様子を見ているだけで、再び抱きしめたくなる。
―― 末期だ。ありえない。
俺は、これ以上真美の顔を見ることができなくて、こっそりとベランダに出た。
寝室にいたら間違いなく襲う。
そう断言できてしまう自分。まったく呆れる。
真美は今まで男と付き合ったこともない。もちろん俺が真美にとって初めての男だ。
真美の過去を聞くと、「なるほど、確かに女だらけだな」と納得してしまうぐらいに、真美の今までの人生は男との接触が全くなかった。
あるとすれば、幼馴染で真美の初恋の相手だけだ。
その男の顔を思い出し、少しだけ嫉妬する。
すでに真美のこころは自分に向けられていて、その男には恋愛の「れ」の字も感じていないということはわかる。
わかるが……過去の男だとはいえ、面白くないものは面白くない。
今までの自分は恋愛に淡白だった。
人並には性欲もあったわけだが、吐き出さないといけないほど強くもなかった俺は、特に女を必要としなかった。