【番外編】ルージュはキスのあとで
「行く」
「ほ、本当ですか? で、でも、お仕事は? 土曜日ですよ?」
「ああ。なんとかする」
「なんとか……なるんですか?」
頬を真っ赤に紅潮させて嬉しそうな顔をみていたら……なんとしてでも都合をつけてしまおうと思うものだろう。
コクリと頷くと、パッと花が咲いたように満開の笑顔がそこにはあった。
で、当日。
進に協力してもらったりして、なんとか都合をつけた土曜日の夕方。
「長谷部さんのお家に一度寄らせてもらってもいいですか?」
真美から前日に言われたので部屋で待っていれば、大きな荷物を抱えた真美が笑顔でやってきた。
「なんだ、この荷物は」
「あはは」
笑って誤魔化す真美を見て、俺は眉間に皺を寄せる。
「ひと言言えば迎えに行ったのに。重かっただろう?」
「だ、大丈夫ですってば! これぐらい。私、結構力持ちですから」
腕力には自信あり! と鼻息が荒い真美を見て、俺は少しだけ苦笑する。
真美ときたら、相変わらず俺に頼ってこない。
少しは頼ってきてほしいと思っているのだが、目の前の女にはそれが通じない。
再三、言ってきたのだが直す様子は見られない。