【番外編】ルージュはキスのあとで
「だってさっきまでお仕事だったんですよね? 疲れているときに家まで来てもらうだなんて……申し訳ないし」
「……でたな、申し訳ない」
なにかあればすぐに「申し訳ない」だ。
そのたびに俺が怪訝な顔をすることぐらい、そろそろ学習してもらいたいものだ。
俺が何を言いたいのかわかったのだろう。
真美は、慌てて話しを切り替えた。
「えっとですね。寝室お借りしてもいいですか?」
「?」
俺が首を傾げれば、真美は持ってきた荷物を掲げて笑った。
「浴衣に着替えたいんですよ……いいですか?」
「……ああ」
俺の返事を聞くなり、すぐさま寝室に飛び込んでしまった真美。
次に寝室から出てきた真美は、藍色の浴衣姿になっていた。
見たことがない真美の浴衣姿。
チラリと見える項。
あまりの色っぽさに、俺は……理性がぶっ飛びそうになるのをグッと我慢する。
「長谷部さん。もしよかったら……久しぶりにメイクしていただけませんか?」
「え?」
「浴衣メイクってどうしたらいいのか、見当もつかなくて……」
「あ、ああ。そこに座れ」
「はい!」