【番外編】ルージュはキスのあとで
「雑誌がでて、びっくりするぞ。きっと」
真美さんは、きっと京にはこのことを言わないだろう。
いや、言えないな。
まだ京がOKだしたなんて半信半疑だろうから。
もし、京がOKだしていないとしたら……どんな恐ろしいことになるか、真美さんは何となく想像できているのだろう。
絶対に真美さんの口からは京に伝わることはない。
京が今回のことを知るのは次号が発売されたときだ。
「お兄様をないがしろにすると、こういう恐ろしいことになるんだからね。可愛い弟よ」
雑誌が出れば、すぐさま京は俺に連絡をしてくることだろう。
手に取るように、京の行動が読めて楽しくてしかたがない。
後日。『Princesa』が発売されてすぐに京が事務所に乗り込んできた。
「進。これは一体どういうことだ!」
バンと机に叩きつけたのは、今日発売の最新号『Princesa』。
開かれたページには、デカデカと真美さんの顔が映し出されている。
ものすごい剣幕の京をみて、俺は思わず噴き出してしまった。
俺の態度がいたく気に入らなかったのだろう。
京は睨みつけてきた。おお、怖い。
「どう? 京。他のメイクアップアーティストが手がけると、こんな真美さんの表情も見れるんだよ?」
「……」
「可愛くない? なかなかの出来だと思うんだけどな」
そういいながらも、俺はちゃんと気づいている。
京がメイクをしたときのほうが、真美さんのよさを引き出しているってことぐらい。
だけど悔しいから言ってやらないんだもんね。
ツンとそっぽを向くと、京は大きくため息を零してソファーに腰掛けた。
「本当、いい加減にしてくれよ」
「ん? なんで?」
「……」
「京が悪いんだろ? 優しいお兄様をないがしろになんてするからさ」
イヤミたっぷりにそういうと京は思い当たるフシがあったのだろう。黙りこくった。
何も言わないけど、俺はわかっている。なんていったって双子だしね。兄だしね。
俺はニンマリと笑いながら京をからかった。
「京はさ、自分のテリトリーで真美さんを囲いたいんだろう? 他の人間には見せたくないんだろう? 独り占めしたいんだろう?」
「……」
頬を赤らめる京。
まったく仕草がいちいち可愛いんだよな。コイツは。
俺は肩を竦めた。
「誰にも見せたくないし、他の男に触らせたくない。そんなところか?」
視線を逸らす京にそう聞くと、チラリと俺のほうを見て京は呟いた。
「俺の手でアイツをキレイにしてやりたい……」
なんだよ、京のやつ。真剣な顔をして言うなよ。
見ていられないぜ、まったく。
真美さんに溺れているとは思っていたけど、ここまでとは。
からかうのもバカバカしくなってきた。
「わかったよ。京。今回のことは俺が悪かった」
「進」
「ただな、たまには顔を出せ。真美さんに2回会ったら、俺に1回ぐらいの割合でいいから」
譲歩して言ってやったのに、相変わらず憎たらしいほど可愛い弟からは呆れる答えが返ってきた。
「……真美に5回会ったら、進に1回電話する」
「なんだよ、顔だしてくれないのかよ?」
そう拗ねると、京はクスリと笑った。
「じゃあ、真美と一緒にメシ食いに行ってやる」
「はいはい、それでいいよ」
もう、お手上げ。
俺の見えないところで、十分にノロケてくれよ。
あ、そういえば。
真美さんに今回のこと謝っていなかったな。
俺はニヤリとほくそ笑んだ。
「そうそう、京。この撮影のとき、真美さんね。俺がメイクしてあげたら“ うわぁ、すごい! 可愛くなった!”ってご満悦だったぜ?」
「……」
あ、一気に京の周りの温度が下がった。
はい、これで真美さんのお仕置き決定。
京からの愛あるお仕置きをたっぷり味わいな、真美さん。
これで明日はベッドから離れられないこと決定だな。
あとで真美さんにメールをしておこう。
“謝罪の代わりに、京との絆をもっと深くしてやったぞ。感謝しろよな、真美さん”
さぁて、真美さんからの返答は……なんて返ってくるだろうか。
俺は思わず想像して噴き出した。
FIN
真美さんは、きっと京にはこのことを言わないだろう。
いや、言えないな。
まだ京がOKだしたなんて半信半疑だろうから。
もし、京がOKだしていないとしたら……どんな恐ろしいことになるか、真美さんは何となく想像できているのだろう。
絶対に真美さんの口からは京に伝わることはない。
京が今回のことを知るのは次号が発売されたときだ。
「お兄様をないがしろにすると、こういう恐ろしいことになるんだからね。可愛い弟よ」
雑誌が出れば、すぐさま京は俺に連絡をしてくることだろう。
手に取るように、京の行動が読めて楽しくてしかたがない。
後日。『Princesa』が発売されてすぐに京が事務所に乗り込んできた。
「進。これは一体どういうことだ!」
バンと机に叩きつけたのは、今日発売の最新号『Princesa』。
開かれたページには、デカデカと真美さんの顔が映し出されている。
ものすごい剣幕の京をみて、俺は思わず噴き出してしまった。
俺の態度がいたく気に入らなかったのだろう。
京は睨みつけてきた。おお、怖い。
「どう? 京。他のメイクアップアーティストが手がけると、こんな真美さんの表情も見れるんだよ?」
「……」
「可愛くない? なかなかの出来だと思うんだけどな」
そういいながらも、俺はちゃんと気づいている。
京がメイクをしたときのほうが、真美さんのよさを引き出しているってことぐらい。
だけど悔しいから言ってやらないんだもんね。
ツンとそっぽを向くと、京は大きくため息を零してソファーに腰掛けた。
「本当、いい加減にしてくれよ」
「ん? なんで?」
「……」
「京が悪いんだろ? 優しいお兄様をないがしろになんてするからさ」
イヤミたっぷりにそういうと京は思い当たるフシがあったのだろう。黙りこくった。
何も言わないけど、俺はわかっている。なんていったって双子だしね。兄だしね。
俺はニンマリと笑いながら京をからかった。
「京はさ、自分のテリトリーで真美さんを囲いたいんだろう? 他の人間には見せたくないんだろう? 独り占めしたいんだろう?」
「……」
頬を赤らめる京。
まったく仕草がいちいち可愛いんだよな。コイツは。
俺は肩を竦めた。
「誰にも見せたくないし、他の男に触らせたくない。そんなところか?」
視線を逸らす京にそう聞くと、チラリと俺のほうを見て京は呟いた。
「俺の手でアイツをキレイにしてやりたい……」
なんだよ、京のやつ。真剣な顔をして言うなよ。
見ていられないぜ、まったく。
真美さんに溺れているとは思っていたけど、ここまでとは。
からかうのもバカバカしくなってきた。
「わかったよ。京。今回のことは俺が悪かった」
「進」
「ただな、たまには顔を出せ。真美さんに2回会ったら、俺に1回ぐらいの割合でいいから」
譲歩して言ってやったのに、相変わらず憎たらしいほど可愛い弟からは呆れる答えが返ってきた。
「……真美に5回会ったら、進に1回電話する」
「なんだよ、顔だしてくれないのかよ?」
そう拗ねると、京はクスリと笑った。
「じゃあ、真美と一緒にメシ食いに行ってやる」
「はいはい、それでいいよ」
もう、お手上げ。
俺の見えないところで、十分にノロケてくれよ。
あ、そういえば。
真美さんに今回のこと謝っていなかったな。
俺はニヤリとほくそ笑んだ。
「そうそう、京。この撮影のとき、真美さんね。俺がメイクしてあげたら“ うわぁ、すごい! 可愛くなった!”ってご満悦だったぜ?」
「……」
あ、一気に京の周りの温度が下がった。
はい、これで真美さんのお仕置き決定。
京からの愛あるお仕置きをたっぷり味わいな、真美さん。
これで明日はベッドから離れられないこと決定だな。
あとで真美さんにメールをしておこう。
“謝罪の代わりに、京との絆をもっと深くしてやったぞ。感謝しろよな、真美さん”
さぁて、真美さんからの返答は……なんて返ってくるだろうか。
俺は思わず想像して噴き出した。
FIN