【番外編】ルージュはキスのあとで
「俺が担当することになるモデルなんですが……」
「モデル?」
「ええ。プロ意識が高い人限定にしていただきたいのですが」
「……」
「ついでに、できたら付き合っている彼がいるモデルでしたら言うことなし、ですね」
「……なるほど、ね」
思わず噴出してしまった。
彼が兄の神埼進のようにメディアにでてこない理由がわかった気がした。
ようするに自分の外見を見て、モーションをかけられるのが嫌だ、と。
そういうことね。
確かに、その点では神崎進も苦労しているようにみえる。
だけど、彼のすごいところは、それをうまくあしらえるところだ。
モデルの自尊心を傷つけることなく、やんわりと断るという手腕をもっているのだ。
だけど……。
私は、目の前のとっつきにくそうな彼を見つめた。
確かに、彼じゃ……進くんみたいには無理そうね。
笑いをなんとか噛み殺している私は、肩が揺れてしまっている。
それを見て、ますます不機嫌に磨きをかける長谷部京介。
目に浮かんだ涙を指で拭ったあと、彼に笑いかけた。