プライマリーキス 番外編&溺愛シリーズ
「……会いたいです。ちょっとの間なのに、ヘンですね」
『……同じだよ。側にいすぎたせいかな。君がいないと眠れないみたいだ』

「確か、明日は午前から大事な会議。もう休んでください。眠れないなら……少しお酒を借りて」

『平気だよ。スケジュール、少し変更をしてもらった』
「どこか体調でも?」

『いや、別件が入ってきてね。心配することないよ。君も疲れただろう? そろそろ休んで』

「……ありがとう」
『声が聴きたかったのは僕だから』

 不思議な感じ。離れていて寂しいと感じることも、電話でこうして話すことも。

 今日ちょっとこうしてみて良かったのかもしれない。改めて大切な気持ちを思い出した気がするから。

 私は見上げた月が潤哉さんに思えて、なんだか頬を緩ませた。
 会ったら、たくさん抱きしめて欲しい。ぎゅっと抱きつきたい。あの広い背に抱きしめられて、低くて甘い声を聞いていたい。

『会ったら……君をたくさん抱きしめたい』
「あ、今、言おうと思ったのに」

『珍しい。君が?』
「会ったら、たくさん、抱きしめてください」

『約束するよ。僕はそれ以上を望むけどね』

 いつものように冗談を入り交えて、彼は笑っていたけれど。

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