プライマリーキス 番外編&溺愛シリーズ
「さっき言った通りだよ。がっかりしなくていいって――」

 言いかけたときだった。美羽がドアを開けて、僕へスティックを差し出して見せた。そこにはくっきりと線が現れていた。

 彼女が涙を浮かべて泣いていたのは、僕が想像したこととは反対だった。

「嬉しくて」

 そこから声にならない美羽を、僕はやさしく抱きしめて、彼女の腹部へそっと触れた。

「まだ、病院に行かなくちゃ分からないけど、でも……」
 99.9パーセントの文字がちらつく。

「キミがいるって分かっていたら、もっとやさしく抱いたのに……」
「潤哉さん」
「明日、君は半休をもらって。午後、一緒に病院に行こう」
「でも」

「もちろんすぐに僕は戻らないといけないけど。君はいつも大事なときに僕の側にいてくれた。僕にもそうさせて欲しい」

「……ありがとう。潤哉さん」
「体、冷えるから、おいで」

 彼女の細い身体を抱きあげたとき……僕の胸にもせつないような愛しさがこみ上げていくのが分かった。

 大切にしたいと思うのはただ一人だけだと思っていた。でもこれからは……二人だ。

 新しく芽生えた、僕と美羽の子は、どんな風に育っていってくれるだろう。

< 128 / 137 >

この作品をシェア

pagetop