プライマリーキス 番外編&溺愛シリーズ
 検診の帰りは、二人で手を繋いで歩いた。
 ちょっとカフェにでも寄って、ゆっくりとしようか、と潤哉さんが言ってくれた。

 彼はまたオフィスに戻らないといけないらしい。

 一緒に暮らしていても、すれ違いはたくさんある。
 社長と秘書として、仕事でもくっついていられたときとは、きっとこれからも勝手は違うだろう。

 潤哉さんがいないときに、一人の時になんかあったら大丈夫かな、とか、一人で頑張れるかな、と不安になることもあるけど、

 とにかく今は楽しみで仕方ない。

「蹴ってる、蹴ってる」

 私は彼の手を引き寄せ、彼は私のお腹にそっと耳を寄せた。

 仕立てのいいスーツを召した社長が、跪く姿なんて……なんだか似合わなくて、目立ってしまっているんだけど、彼は構わず嬉しそうに頬を緩めて、私のお腹にキスをした。

「どんな名前がいいかなぁ?」

 私は性別が分かったら、早く名前をつけてあげたいなぁと考えていた。

 名前があれば語りかけしてあげられるし、ベビーちゃん、というよりも、ちゃんと名前をつけてあげたくて。

 名前辞典の本を並べて、いいなと思うところに付箋をはっていた。

 帰宅したら、二人で相談したいなぁなんて思っていた私だけど、なんか潤哉さんは別のこと考えてるみたいだ。

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