プライマリーキス 番外編&溺愛シリーズ
 猛獣使いもこの頃慣れてきて、彼がどう言えば喜ぶか、どんな風に扱ったらいいか分かってきてる。

 大きな子供を側に置いているような気分になるのは、私に芽生えた母性の所為もあるのかな?

 シルエットが傾いて、唇が近づく。
 ロンドンでは普通だったことでも日本じゃ違うんだけど。

 通行人なんて、我関せずだから、もういい……。
 だって、私たちの一分一秒は、私たちのものなんだし。
 
 陽がゆっくりと落ちていく街角の隅で、誰も私たちのことなど見ていない。
 ほんの少しだけ入り組んだ路地裏に隠れて、私たちは静かにキスを重ねた。

 ヒールの高い靴は履かなくなった。
 だから、背の高い彼からのキスを待ちうけるとき、私は少しだけかかとをあげて、彼の首の後ろに腕を回す。

 密着しすぎないように潤哉さんは私を抱き寄せて、それから宝石みたいにキレイな瞳を伏せて、やさしく上唇を啄ばんだ。

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