プライマリーキス 番外編&溺愛シリーズ
「……だから言ったのに」
 美羽は小さく呟いて、僕を窺う。

「君を抱くのは別だよ。それすらなかったら僕はますますマシンのようになってしまうよ」

 コーヒーを、と僕が言うと、美羽は渋ってみせた。

「少しカフェインを休めるといいかもしれないですよ? 今週はハーブティにしましょうか。セクレタリールームでもそんなこと話していたんです。このところ重役は会議尽くしだからって。ちょっと提案するのは緊張しちゃったけど……」

 美羽が恐れをなしているセクレタリーのボスは実に神経質な女性で、コーヒーの淹れ方一つも同じでなければ気が済まない、アメリカ人には類をみない潔癖症タイプだ。

 つい先週も、美羽の選んだコーヒー豆を気に入らないといいチェックを入れた。

 僕が一言割って入ろうものならば、贔屓はやめて欲しいと言いだし、すぐにパワハラで訴訟がどうのと持って来るのだから厄介な女性だ。


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