プライマリーキス 番外編&溺愛シリーズ
「――久しぶりに眠ってましたね」
おだやかな微笑みがぼんやりと見え、僕はゆっくりと視界を戻していく。
目に留まったベッドサイドの時計は、とっくに昼過ぎをさしていた。
「CEOには連絡入れました。とても……お疲れなので……また、今度と」
美羽の頼みならばCEOはノーとは言わない。実の娘以上に溺愛しているところを見ると。
「……何日ぶりだろう、今度は、眠たくて仕方がない」
「それはそうですよ。つい“さっき”まで、ですもん」
美羽が唇を尖らせてそう言った。ほんのり頬を染める彼女の肌のあちこちにそれ以上に赤い薔薇のような刻印が。あれは、僕がつけたものか?
「――記憶にない」
ひどく痛む頭を抑えて、一息つく。
「……そんな、ひどい」
「嘘だよ。覚えていないわけがない。まだ足りないぐらいだ」
「じゃあ、これも覚えてますか?」
ベッドのサイドにばらついたプラスチックの束。それはコンドームだ。
ズキと痛むこめかみを抑えて、ぼんやりと記憶を辿る。没頭するように愛して、彼女が溺れるように乱れていた昨晩のこと――。