プライマリーキス 番外編&溺愛シリーズ
 表情を曇らせる私に、潤哉さんは耳元で囁く。

「嫉妬してる?」
「別に、違いますよ。ただ、凄く綺麗な方で……なんていうかリッテルの代表には申し訳ないけど、潤哉さんとの方が似合っていて、ダンスパーティの時も……」

 色目を使った、なんて咎めるつもりはないけど……なんとく不満だったし、リッテルの代表も面白くなさそうな顔をしていたのだ。

「でも、僕は一度きり、断ったはずだよ。社交辞令さ。だいたい、代表に嫌われたらどうしようもないだろう」

「分かってます。今までだってそうだったし、これからだってそういう機会は多くあることも。でも、女心は複雑なんです」

「美羽のそういう顔を見る度、僕は嬉しくなるけどね」

 穏やかだけど、やっぱりS体質……。
 それとも、なんだかこの頃、こういう煽りが多いみたい。

『誘惑するのは君だけど……お預けするのは僕の方』
 ……なんて、しつこく言ってたし。

『最終的に、欲しいものを……聞きたいだけ。君のこの唇から』

 欲しいと言って。

 まるで呪文。それとなく言ってみたくなってしまう。

 でも、なんて?
 おねだりする仕方なんて……分からないよ。

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