プライマリーキス 番外編&溺愛シリーズ

(10)愛しさ余って <潤哉>

 ウィルとの生活が慣れる頃、ミシェルから美羽宛に連絡が入った。
 京都からのお土産を持ってロンドンへ帰国するという話だった。

『八つ橋ってなんだ?』と訊くと、美羽が絵を描いて教えてくれた。
 いつか僕たちも行こうかと言うと、美羽は楽しそうに笑顔を咲かせた。

 そんな顔をされたら、ますます日本へ戻りたくなるじゃないか。

 まだ、なのか、もう、なのか……プロジェクトの半分は進んでいるが、仕事に没頭しても時はなかなか過ぎない。

 ここにウィルがいるから尚のこと思うのかもしれないけれど。

 美羽は純粋にミシェルの幸せを喜んでいたが……。

 僕はやっと解放される、という喜びの方が大きかった。


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