プライマリーキス 番外編&溺愛シリーズ
「すごく幸せそうだった」
「驚いたよ。あんな彼女の表情は初めてだ」
「ウィル預かって良かったですね」

 美羽は言って、僕の腕に絡みついてきた。

 ふわりと甘く香る彼女の肌の匂いが好きだ。

 何かをつけていなくても柔らかく僕を包んでくれる。やさしく抱きしめたくなる。

 だけど今はきつくぎゅっと抱きしめたくなった。

「ん、苦しい」
「ああ、ごめん」
「どうして暗い顔をしているの? 二人きりになれたこと、喜ばないの?」

 冗談っぽく美羽は笑い、僕の顔を覗き込んでくる。

「いや、さっきので、君がどう感じたかなって」

 ただそれだけで、美羽は僕の言いたいことを察してくれたみたいだ。

「欲しいって確かに言ったけど……でも、私には手に入るはずのなかった未来が……ここにあるから。だからやっぱり、もう少しゆっくりでもいいかなって。なんて、欲しいってあれだけ言ってたのに……気まぐれ? それとも、わがまま?」

「……いや、君に甘えられること、君が笑ってくれること……君が側にいてくれること、それが僕にとっての幸せだから」

「私……人の幸せの顔って好き。大切な人の笑顔を見ると、心が軽くなるの……久美ちゃんのときも、ミシェルのときも、同じきもちだった。何より、潤哉さんが笑ってくれると嬉しくて……幸せって感じてもらえることを探したくなるの。それが赤ちゃんだったらって思ったんだけど……」

「うん……美羽、分かったよ。ありがとう」

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