プライマリーキス 番外編&溺愛シリーズ
 激しい鼓動が組み重なり、荒々しい吐息が入り混じる。
 汗ばんだ肌をくっつけあいながら、静かに目を瞑って、そしてまた、そっと開いた。

 その瞬間、ぱちりと目と目が合って、お互いにはにかんで笑う。

「だんだん、おねだり上手になってきたみたいだね」
「また、そーいうこと言う」

「僕だけだと思ったけど。君も覚悟しておいた方がいいよ」
「何がですか?」
「愛する女性は一人だけってことさ。夢中になれるのはね」

 あえてオブラートに包んで言っても、すぐに美羽は勘付く。案の定、ふくれっ面を下げた。

「娘ができても、私を一番に好きって言うって……言ったのに」
「その顔が見たくて言っただけ」
「もうっ」

 こんなに愛おしい存在が、もう一人できたら、一体僕はどうなってしまうのか。


 まだ想像はできない。


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