天使の舞―前編―【完】
しかし、人間界で乃莉子を見て、彼方は少しだけ動揺し、安心した。
何故なら乃莉子は、彼方が幼い頃から特別な気持ちを抱いている悪魔に、容姿が似ていたからだ。
いつか人間の娘を、妃にしなければならないと分かっていても、抑えられなかった恋心。
魔王から人間界行きの命を受け、愛しい人を諦める事を、やっと自分に言い聞かせた。
この人間なら・・・。
黒く艶めく長い髪は、しなやかに潤っている。
長いまつ毛の瞳には、凛とした光が宿り、その中にも清楚な優しさがある。
未だ見せない笑顔は、時折それを見る者にとって、宝石の輝きのようにさえ感じるのだろう。
まさに悠が、乃莉子に堕ちたのは、この笑顔のせいであった。
彼方は心の中で
『シラサギ』
と、呼びかけてみる。
目の前で自分に鋭い視線を投げかけている、人間の美しい女に。
返事は返ってこないと、分かっていても。
何故なら乃莉子は、彼方が幼い頃から特別な気持ちを抱いている悪魔に、容姿が似ていたからだ。
いつか人間の娘を、妃にしなければならないと分かっていても、抑えられなかった恋心。
魔王から人間界行きの命を受け、愛しい人を諦める事を、やっと自分に言い聞かせた。
この人間なら・・・。
黒く艶めく長い髪は、しなやかに潤っている。
長いまつ毛の瞳には、凛とした光が宿り、その中にも清楚な優しさがある。
未だ見せない笑顔は、時折それを見る者にとって、宝石の輝きのようにさえ感じるのだろう。
まさに悠が、乃莉子に堕ちたのは、この笑顔のせいであった。
彼方は心の中で
『シラサギ』
と、呼びかけてみる。
目の前で自分に鋭い視線を投げかけている、人間の美しい女に。
返事は返ってこないと、分かっていても。