天使の舞―前編―【完】
「ほぉ…。
キャスの事は、愛してはいないと?
好都合じゃないか。
この俺が、愛でてやると言っているんだ。
俺の妃になればいい。」


彼方はそう言うと、椅子から音もなく立ち上がり、乃莉子を組み敷こうとベットへ歩み寄った。


彼方の良からぬ笑みにドキッとして、乃莉子が後退ろうとした時だ。


部屋の扉の外から、小声で彼方を呼ぶ声が聞こえた。


「…アマネ様。」


遠慮がちに囁く、鈴の音のような女性の声である。


彼方はその声に、必要以上にビクッと反応して、ベットから慌てて離れた。


そして彼方は足早に、声の主を部屋に招き入れるため、自ら扉に向かった。

< 106 / 230 >

この作品をシェア

pagetop