天使の舞―前編―【完】
彼方は、乃莉子をチラッと見てからシラサギに言った。


「シラサギ…俺は…。
この人間を、妃に決めた。」


「さようでございますか…。」


シラサギは力なく呟き、彼方を見上げた。


「シラサギ俺は…。」


その先に続く言葉を飲み込んだ彼方。


そんな彼方の眼鏡の奥の瞳が、何を物語っているのか、乃莉子は察してしまった。


『彼方くんはきっと、シラサギさんを想ってる。
本当は、アマネのままでいたいんだ。
何故自分の想いを偽ってまで、私を妃になんてしたがるの?
私には理解できないけど、王子様って、面倒な立場みたいね。』


少し同情の気持ちにさえなってしまい、乃莉子は慌てて頭を振った。


だからといって、無理矢理魔界に連れて来られる道理はないのだ。


< 109 / 230 >

この作品をシェア

pagetop