天使の舞―前編―【完】
「乃莉子様…でしたでしょうか。
あなた様はもしかして、天界の王子と名前の契約を…。
王子に名前を、贈ったのですか?」


乃莉子は、恐る恐る答えた。


シラサギの全身から溢れ出る怒りにも似た黒いオーラが、乃莉子にひしひしと伝わってくるからだ。


「私は、そんなつもりなかったんですけど、成り行きで…そういう事になってしまったんです。」


シラサギの瞳が、大きく見開かれる。


「かの王子に名前を贈っておきながら、我が王子の妃に収まろうだなんて、なんと不届きな!
アマネ様はその事、ご承知なのですか?」


涼やかな鈴を鳴らしたような音色の声が、乃莉子の耳を震わせた。


シラサギは、アマネが魔王から指示されている内容を、知らないでいる。


天界の王子の妃を奪え、という命令が下されている事を…。

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