天使の舞―前編―【完】
先程見せた怒りの表情は既になく、シラサギは深々と乃莉子に頭を下げて、懇願した。


でも、乃莉子は釈然としない。


「そんなの、間違ってるわ。
お願いされたって、私、困ります。
あなた達、好き同士なんでしょう?
あなたが妃になればいいじゃないですか。」


乃莉子はシラサギに聞かされたばかりの恋物語を、実らせてあげたい気持ちになっていた。


でも…。


「それが許されないのが、王子という、お立場なのです。
アマネ様は生まれた時から、魔界の王子でいらっしゃいました。」


頭を下げたままでシラサギは、自分に言い聞かせるかのように、力強く乃莉子に断言した。


乃莉子には
『分かっていて、好きになった自分が悪いんだ』
と、シラサギが自身を責めているのが伝わってくる。


なんて切ない言葉を、口にするんだろう。


乃莉子はそう思わずに、いられなかった。

< 118 / 230 >

この作品をシェア

pagetop