天使の舞―前編―【完】
キャスパトレイユの耳に、思いがけない言葉が届く。


急停止するように、キャスパトレイユは移動するのを止め、空中に留まった。


大きく羽ばたく翼の音だけが、響く。


キャスパトレイユは、自分が抱えている乃莉子を、マジマジと確認してみる。


すると、妃を迎えに来たはずの王子の顔に、難しい表情が浮かんだ。


キャスは、ちょっと小首を傾げて上を向き空を仰ぐと、大きく深呼吸をする。


そして再び、腕の中の人物をゆっくりと、確認した。


「残念ですが、何度確認されようと、私は乃莉子様ではございません。」


受け入れがたい一言が、非情にもキャスパトレイユに浴びせられた。


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